協調性の不足する従業員の解雇のポイントは?

問題社員

はじめに

同僚や上司に反抗し協調性のない従業員への対応に悩む経営者の方は少なくありません。

今回は、協調性のない従業員の解雇の法的なポイントと対応策を解説します。

協調性の不足する従業員の解雇はどのような問題があるのか

自分の言動に問題がある自覚がない

協調性の不足する従業員が一人でもいれば、他の従業員のモチベーションが下がり、優秀な従業員が「あの人が辞めないならば私が辞める」と言って辞めてしまうことになりかねません。

他方で、このタイプの従業員は、「自分は正しいことを述べている」と考えていることが多く、自分の言動が周りに迷惑となっている自覚がありません。

このため、指摘をしても、「私は間違っていない」等と反発し、解雇をした場合には、「私が解雇されるのは納得いかない」といって裁判などの紛争に発展するケースが多くなります。

弁護士のコメント

一般的に問題社員に辞めてもらう際には退職勧奨を行うことが多いです。

しかし、協調性の不足する従業員の場合、問題行動の自覚がないため、退職を迫られる理由がないと判断し、退職勧奨を拒否するケースが多いです。

実際に、東京地裁令和5年8月2日判決で、会社は賃金3か月分での退職を提案しましたが拒否されています。

このため、協調性のない従業員への対応はまず自覚を持ってもらうことからスタートする必要があります。

裁判所が協調性不足を理由とする解雇をなかなか認めない

協調性のない言動を繰り返した裏付けがなかった事案

協調性がないことを理由とする解雇が争われた場合、裁判所は、「協調性が欠けることの裏付けがない」「改善の可能性があった」等と判断して解雇を無効とすることが多いです。

例えば東京地裁令和5年8月2日判決では、協調性の欠如を理由とした解雇が無効とされ、会社は解雇日以降の賃金として330万円超の支払いを命じられました。

東京地裁令和5年8月2日判決

この事案は、従業員Xが、他の従業員に対して、「あなたの言うことは聞きたくない」と述べたり、有給休暇の取得方法に問題があったり、業務指示を無視したり、自分に振られた仕事について、「それは他の人の担当です」と述べて業務を拒否するなどしたことを理由に、使用者YがXを解雇した事案です。

裁判所は、一部の発言について裏付けがないことや、業務を無視したのが指示が聞こえなかった可能性が否定できず故意によるものではなかったこと、注意をしても同じ言動を繰り返した証拠がなかったこと等を理由に、解雇を無効と判断しました。

業務への支障が不明であったため解雇が無効となった事案

また、福岡地裁令和6年4月24日判決(ゴルフ協会の事案)では、協調性に問題のある従業員の解雇が、業務上の支障が不明確であることを理由に、無効となり、毎月30万円以上の賃金支払いが命じられています。

福岡地裁令和6年4月24日判決

ゴルフ競技大会を運営する少人数の事務局で、コミュニケーション能力・協調性の不足を理由に解雇した事案。裁判所は、本人の担当業務自体は特段問題なく遂行していたこと、事務局長も事務処理能力を評価していたこと、指導に対し反省・改善の意向を示すメールを送っていたこと、解雇後に後任者を採用しておらず、深刻な業務上の支障があったか明確でなかったこと等から、解雇無効と判断しました。

協調性の不足する従業員の解雇にむけて、当事務所ができること

現在の言動の状況を確認する

上記の裁判例でも問題となったように、協調性の欠如は、具体的にどのような発言がいつあったのかの裏付けが欠かせません。

当事務所では、弁護士が、従業員からの苦情をもとに当該従業員への聞き取り調査や、行為者となる従業員へのヒアリング調査の準備・台本整理を行います。また、必要に応じて、弁護士がヒアリングを行うこともあります

協調性が不足した従業員の問題行動について聞き取る事項

  • 誰が:被害を受けた従業員の氏名
  • いつ:発言・行動の日時
  • どこで:発言・行動の場所
  • 何を言ったか/したか:発言・行動の具体的な内容
  • 具体的な発言の特定方法
  • メール・チャット等の文書証拠を確認する

弁護士のコメント

京都地裁令和4年4月27日判決(大阪高裁でも結論は是認)では、問題行動の記録がなく「いかなる時に、いかなる内容のことをどの程度話し、それにより周囲がどの程度迷惑をしたのか」が全くわからない状態では、月額3,000円の賃金引き下げさえも違法とされた事例があります。

問題行動の記録が、いかに重要かがわかります。

協調性の不足する従業員への指導書を作成する

協調性の不足する従業員に対しては、文書で指導を行うことが欠かせません。

指導の記録を残すとともに、問題社員に、会社がその言動を問題視していることを自覚してもらうためです。

協調性が不足する従業員の場合、問題点の自覚がないこともあり、指導に対して「一方的に決めつけてパワハラである」等と反論することもあります。

当事務所では、このような反論に耐えうる業務指示書や指導書を作成するとともに、パワハラ主張に対してどのように反論すべきかを整えて対応します。

懲戒処分を含めた対応を実施する

指導をしても問題行動が直らない場合には懲戒処分を行い、会社の本気度を示すことになります。

裁判例の中には、会社が懲戒処分を警告していたが、実際には懲戒処分をしていなかった事案があります。

このような事案では、会社が本気で問題視していることが相手に伝わらず、労働者側に問題の自覚を促すことはできません。

会社による指導が不足していたとの評価を招き解雇が無効となるリスクが高まります。

そのため、懲戒処分等の対応が必須となります。

弁護士のコメント

懲戒処分を行うためには就業規則が周知されているか、適切な規定があるかがまず必須となります。また、懲戒事由の特定や重すぎない処分の選定が欠かせません。

弁護士が対応を代行することで、法的紛争リスクの低い手順と方法による懲戒処分が可能です。

懲戒処分の対応を弁護士に相談する

退職勧奨による退職のための台本作成や交渉を代行

解雇を検討する前に、まず退職勧奨(会社からの話し合いによる退職の提案)を実施することが重要です。

協調性の欠如の場合、問題行動が繰り返されていても解雇が無効になるケースは珍しくないためです。

当事務所では、退職勧奨の成功に向けて、

  • 辞める必要性(問題行動の深刻さと会社としての姿勢)を伝える台本を作成する
  • 辞めるメリット>辞めるデメリットと感じてもらえる適切な退職条件を提示する
  • 辞めても良いという感情になってもらう・感情的な納得感を得るための話し方をする

等の対応を講じます。

弁護士のコメント

最新裁判例では、会社は賃金1か月分(1回目)・3か月分(2回目)という条件を提示しましたが、問題社員が懲戒処分の警告を「単なる脅し」と受け止めていたため、辞める必要性の認識がなく、退職勧奨は失敗しました。

懲戒処分を事前に実施することで退職勧奨の成功率が上がります。当事務所が対応した実際の事案でも、この手順を踏むことで問題社員の退職に成功しています。

まとめ

協調性の欠落した従業員への対応は非常に心身の負担が重たい作業となります。弁護士が対応することで、経営者が経営に専念できる環境を整えます。

監修弁護士の紹介

稲田拓真(岡山弁護士会)

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

実務解説問題社員解雇・退職