業種別|医療機関で顧問弁護士を活用する場面|岡山のクリニック・医療法人向け

患者に説明する医師

岡山県では、人口減少・高齢化が進む中で、地域に必要な医療を継続して提供するため、医療従事者の確保や医師の働き方改革への対応などが課題となっています。岡山県の第9次保健医療計画でも、生産年齢人口の減少に対応したマンパワーの確保や、医師の働き方改革への対応が必要とされています。

病院やクリニックを運営していると、医師・看護師・受付職員などの労務問題、患者や家族からの暴言・過剰な要求、医療事故をめぐる説明、診療情報などの個人情報の取扱い、医療法人の運営・承継など、一般企業とは異なる問題が生じます。

こうした問題は、裁判や労働審判になって初めて法律問題になるわけではありません。

顧問弁護士は、院長や事務長が「この対応を続けて大丈夫だろうか」と感じた段階から相談できる、医療機関の外部法務担当として活用することができます。

1.医師・看護師・スタッフに関する労務問題への対応

医療機関では、医師、看護師、医療技術職、受付・事務職員など、異なる職種の職員が連携して働きます。

一人の職員の欠勤や退職が診療体制に影響することもあるため、人材を確保することと、問題のある職員に適切に対応することの双方が必要です。

欠勤・休職を繰り返す職員への対応

「当日の朝になって欠勤の連絡が続く」「他の職員とのトラブルをきっかけに出勤しなくなった」といった問題が起きることがあります。

特に看護師など必要な人員を前提として勤務体制を組んでいる場合、一人の欠勤によって他の職員の負担が急激に増えることがあります。

一方で、欠勤が多いからといって直ちに退職を求められるとは限りません。

欠勤の理由、これまでの勤務状況、本人への注意・指導、就業規則などを確認しながら対応します。

顧問弁護士には、辞めてもらう段階だけではなく、本人への伝え方や面談記録、注意書をどのように作るかという段階から相談できます。

職員間のハラスメントや人間関係による離職

医療現場では、医師と看護師、上司と部下、ベテラン職員と若手職員など、専門性や立場の異なる職員が一緒に働きます。

強い叱責、無視、特定の職員に対する攻撃的な言動などを「忙しい医療現場だから仕方がない」と放置すれば、周囲の職員の離職につながることがあります。

相談窓口、事実確認の方法、問題が認められた場合の指導方法などを平時から整理しておくことが重要です。

顧問弁護士は、ハラスメントが発生した後の調査だけではなく、就業規則やハラスメント規程を整え、職員が定着するための法務機能を果たします。

医師・医療従事者の労働時間を適切に管理する

医療機関では、通常の診療時間だけでなく、診療前後の準備、カルテの作成、患者・家族への対応、当直・宿日直など、勤務時間の管理が複雑になりやすい特徴があります。

また、岡山県も医療従事者の確保とともに勤務医の労働時間短縮に向けた体制整備を事業として掲げています。

未払残業代などの問題が生じてからではなく、現在の勤怠管理、当直等の取扱い、管理職の労働時間管理に問題がないかを平時から確認しておくことが重要です。

2.患者・家族からの暴言や過剰な要求に対応するとき

医療機関では、患者や家族が病気やけがに対する不安を抱えているため、丁寧な説明や対応が必要です。

一方で、そのことと、職員が暴言、暴力、脅迫、長時間の要求などを受け入れ続けなければならないことは別問題です。

厚生労働省も、患者や家族からの暴力・ハラスメントについて、医療従事者の離職防止や勤務環境改善の観点から対策を重視し、医療機関向けに日頃の備え、発生時・発生後の対応、応召義務、安全配慮義務などを扱う研修教材を公表しています。

弁護士のコメント

医師の場合、賃金が高いため、残業代請求の時間単価が非常に高くなります。例えば、時給1万円となれば、1日1時間の隠れ残業があっただけでも、請求額は700万円を超えてきます。顧問弁護士が、労務管理に関する体制を整備することで、このようなリスクなく、病院運営に専念できる環境を整えます。

暴言・暴力・長時間の要求から職員を守る

受付で怒鳴り続ける、職員の人格を否定する、物を叩く、同じ説明を何時間も求めるといったケースがあります。

特に受付職員や看護師だけに対応を任せると、職員個人に負担が集中します。

「どの段階で院長や事務長に引き継ぐか」「どのような行為があれば警察や弁護士への相談を検討するか」など、医療機関として対応基準を決めておくことが重要です。

患者対応の規程を作り、職員研修を行う

患者対応は、問題が発生するたびに院長が判断するのではなく、一定のルールを作っておく方が対応しやすくなります。

例えば、暴言・暴力、性的な言動、長時間の居座り、職員個人への繰り返しの電話などについて、院内でどのような対応を行うかを整理します。

さらに、規程を作るだけでなく、

「受付で暴言が始まったら誰に連絡するか」

「どのような記録を残すか」

「職員一人で対応させない場面はどこか」

などを研修しておけば、現場で迷いにくくなります。

顧問弁護士には、患者対応規程や院内掲示の作成から、具体的な事例を使った職員研修まで相談することができます。

繰り返される苦情やSNSへの投稿に対応する

患者や家族から電話やメールが繰り返される、SNSや口コミサイトへの投稿をほのめかして謝罪や特別な対応を求められる場合もあります。

医療機関側に説明や改善が必要な場合には適切に対応する必要がありますが、すべての要求を受け入れる必要があるわけではありません。

事実関係を整理し、どこまで回答するのか、今後の連絡窓口を誰にするのかを決め、職員が同じ説明を何度も繰り返さなくてよい体制を作ることが重要です。

弁護士のコメント

患者対応では、「医療機関なのだから患者の要求にはできる限り応じなければならない」と考え、現場の職員が長期間我慢しているケースがあります。

しかし、職員が疲弊して休職・退職すれば、結果として医療提供体制にも影響します。

顧問弁護士には、深刻なトラブルになってからではなく、「この患者への対応をどこまで続ければよいのか」と迷い始めた段階から相談することができます。。

3.医療事故・患者との紛争や個人情報の問題に対応するとき

医療機関では、治療結果について患者や家族から説明を求められたり、診療内容について責任を問われたりすることがあります。

また、診療録、検査結果、病歴など、特に慎重な取扱いが必要な個人情報を日常的に扱います。

医療事故について患者・家族から責任を求められた場合

治療後に症状が悪化した、予想していなかった合併症が生じたなどとして、患者や家族から「医療ミスではないか」と説明や賠償を求められることがあります。

この場合、患者への誠実な説明は必要ですが、十分な事実確認をしないまま法的責任について結論を出すことは避ける必要があります。

診療録その他の記録を確認し、担当した医師・職員から事情を聞いたうえで、必要に応じて保険会社等とも連携して対応します。

顧問弁護士が平時から医療機関の事情を把握していれば、患者への説明内容や記録の確保について早い段階から相談できます。

職員による不適切な対応が疑われた場合

「看護師から不適切な発言をされた」「職員の対応が原因で被害を受けた」などの申告があった場合には、患者対応と職員への労務対応を同時に考える必要があります。

患者から申告があったというだけで職員を処分するのではなく、本人からも事情を聞き、客観的な資料を確認して事実関係を整理することが重要です。

問題が認められた場合には、患者への対応とともに、職員への注意・指導や処分を適切な手続で行います。

診療情報・個人情報の取扱いを整える

医療機関では、診療録、検査結果、病歴など多数の個人情報を扱います。

厚生労働省は「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」を公表しており、2026年4月施行の改正版も公表されています。

患者本人から診療情報の提供を求められた場合だけでなく、家族、勤務先、保険会社その他の第三者から問い合わせを受ける場面もあります。

その都度担当者が判断するのではなく、誰がどのような手続で情報を提供できるのかを院内ルールとして整理することが重要です。

4.医療法人の運営やクリニックの承継を考えるとき

医療法人は通常の株式会社とは異なり、医療法に基づく法人として運営され、定款変更などについて認可が必要となる場合があります。岡山県も、医療法人は他の法人とは異なる制約があるとして、定款変更、役員変更、事業報告など各種手続を案内しています。

医療法人の定款や役員体制を確認する

長年運営されている医療法人では、現在の運営と定款の内容が一致しているか、社員総会や理事会の手続が適切に行われているかを確認する必要があります。

医療法人特有の制度があるため、一般企業の感覚だけで役員や法人運営を変更することはできません。

院長交代や法人運営の変更を予定している場合には、必要な認可・届出を含めて早めに確認することが重要です。岡山県でも、医療法人の定款変更について認可申請が必要となる場合があることを案内しています。

院長個人に依存したクリニックを次の世代へ引き継ぐ

クリニックでは、

「患者は院長個人についている」

「採用や職員対応もすべて院長が行っている」

「建物は院長個人が所有している」

ということがあります。

この状態で後継者に承継する場合には、診療所の運営だけでなく、医療法人の役員体制、土地・建物、医療機器、従業員、借入れなどを整理する必要があります。

病院・診療所の開設や変更についても医療法上の手続があり、岡山県は開設者、管理者、従業者等に関する変更手続を案内しています。

医療機関の承継は複数の専門家と進める

医療機関の承継には、法律だけでなく、税務、不動産、登記、労務、金融機関との調整なども関係します。

当事務所では、事業承継に関する研究会に継続的に参加するとともに、税理士、司法書士、社会保険労務士など他士業とのネットワークづくりにも取り組んでいます。

「まだ誰にクリニックを引き継ぐか決めていない」という段階から、必要な専門家と連携して検討することができます。

まとめ|医療機関の顧問弁護士を「院長・事務長の法務担当」として活用する

職員の欠勤やハラスメント、患者・家族からの暴言や過剰な要求、医療事故への対応、個人情報、医療法人の運営。

医療機関では、法律問題が診療体制や職員の定着に直接影響することがあります。

「この職員への対応をこのまま続けてよいだろうか」

「この患者への電話対応はいつまで続けるべきだろうか」

「患者対応の規程や研修を整えたい」

「院長交代に向けて法人や職員の関係を整理したい」

こうした院長や事務長が少し気になった段階で相談できることが、顧問弁護士を置くメリットです。

当事務所では、岡山県内の医療機関・事業者から、職員の労務問題、患者対応、カスタマーハラスメント、規程整備、契約、事業承継などのご相談をお受けしています。

問題が深刻になる前の段階でも、お気軽にご相談ください。

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