Q 休職中に副業をする従業員は解雇できるか

休職・メンタル不調

休職中の副業を理由とする解雇の検討ポイント

  • 副業の内容・程度
  • 副業の頻度・回数
  • 報酬の有無・金額
  • 副業と本業との関連性、機密等に関連する事項か否か
  • 副業への専念の程度

はじめに

私傷病で休職中の従業員が、他社で働いている、あるいは自分で店を開いているという情報が入ってくることがあります。

私傷病休職制度は、一定期間、就労を免除し、療養の機会を与える制度です。

在籍したまま特別に就労義務を免除しているのですから、その期間に他社で働くことは、休職の趣旨に反し、療養専念義務にも反する行為といえます。

このような従業員への対応について、弁護士が解説をします。

休職中に副業する従業員を解雇できるのか

結論から述べると、解雇できるかどうかは、次のような点を検討する必要があります。

  • 副業の内容・程度
  • 副業の頻度・回数
  • 報酬の有無・金額
  • 副業と本業との関連性、機密等に関連する事項か否か
  • 副業への専念の程度

この点を対照的に示す裁判例が2つあります。

1つ目は、病気欠勤中の従業員が競業関係にある会社で勤務していたことを理由に即時解雇された事案です。

裁判所は、常勤として仕事をしたのではなく、元の同僚のところへ遊びに行き、その機会に仕事を手伝った程度であること、機密事項を扱う立場になかったことなどを踏まえ、解雇は無効と判断しました(東版事件・東京地判昭和59年2月28日)。その結果、会社は、賃金2年分以上の支払いを命じられました。

2つ目は、休職中にオートバイ販売店を開店・営業していた従業員が、就業規則の禁じる二重就職にあたるとして懲戒解雇された事案です。

裁判所は、家族の生活を維持するために自ら開店・経営し、本人の労働力なしでは経営が成り立たないものであって、長期にわたる経営意思があり、もはや復職の意思はなかったと認められるとして、懲戒解雇を有効と判断しました(ジャムコ立川工場事件・東京地裁八王子支部平成17年3月16日判決)。

両者を分けたのは、副業が一時的・偶発的な手伝いにとどまるのか、継続的な就労・経営として復職の意思を否定させる程度に至っているのか、という点です。

副業の事実があるというだけで解雇が正当化されるわけではない、という点を押さえておく必要があります。

弁護士のコメント

通常、副業そのものは会社との信頼関係を破壊しないというのが最近の考え方です。

この点、傷病休職中に副業をしていること自体、会社との信頼関係を損なうものであり、その意味では普通の副業とは異なります。

ただし、その量刑については、慎重な判断が必要ということになります。

なお、厚生労働省の通達の中にも、傷病手当金を受け取りつつ別の場所で就労しているケースについて、直ちに労務可能である(休職の取り消しが妥当する)と判断するのは不適切であり、労務内容や報酬額等を考慮して、労務不能かどうかを判断する旨の記載があります(下記参照)。

このことからも、休職中の副業が直ちに解雇事由などになるわけではなく、慎重な判断が必要となることが裏付けられます。

○資格喪失後の継続給付に係る関係通知の廃止及び「健康保険法第98条第1項及び第99条第1項の規定の解釈運用」について

(平成15年2月25日/保保発第0225007号/庁保険発第4号/)

健康保険法第99条第1項に規定する「療養のため労務に服することができないとき」(労務不能)の解釈運用については、被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であっても、現に職場転換その他の措置により就労可能な程度の他の比較的軽微な労務に服し、これによって相当額の報酬を得ているような場合は、労務不能には該当しないものであるが、本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお労務不能に該当するものであること。

したがって、被保険者がその提供する労務に対する報酬を得ている場合に、そのことを理由に直ちに労務不能でない旨の認定をすることなく、労務内容、労務内容との関連におけるその報酬額等を十分検討のうえ労務不能に該当するかどうかの判断をされたいこと。

対応手順は?

① 事実関係の調査

最初に行うべきは、処分の検討ではなく、事実関係の調査です。

前記の裁判例が示すとおり、結論を左右するのは「副業をしていたか」ではなく「どの程度の副業だったか」だからです。

具体的には、就労先、就労を開始した時期、勤務の頻度と1回あたりの時間、業務の内容、報酬の有無と金額、本人が経営者なのか手伝いなのかといった点を確認します。

週に何日、何時間働いていたのかという頻度・態様は、療養専念義務違反の程度を判断するうえで特に重要な事情となります。

SNSの投稿、求人サイトの掲載、店舗の営業実態など、客観的な資料を残しておくことも欠かせません。

② 注意指導・警告書の発出

副業の事実が確認できたら、副業をやめて療養に専念するよう求める注意指導を行います。

書面(警告書)で行うのが基本で、就業規則の根拠条項を明示し、直ちに中止するよう指示した上で、就業規則に基づく処分も検討していることを伝えます。

③ 病状報告・診断書提出の要求

他社で働けるという事実は、既に私傷病が治癒し、復職し得る状態にあることを示している可能性もあります。

治療経過、診断名、現在の状態、復帰可能時期などについて定期的な報告書と診断書の提出を求め、必要に応じて産業医面談を実施してください。

④ 懲戒処分・休職取消しの検討

調査の結果が出そろった段階で、はじめて処分の検討に入ります。

軽微な手伝いにとどまる場合に懲戒解雇を選択すれば無効となるリスクが高く、調査で把握した頻度・態様に見合った処分を選ぶことが必要です。

弁護士に相談すべきタイミングは?

少なくとも、次の2つの場面では、実行に移す前に弁護士に相談することをお勧めします。

休職の取消しを検討している場合

休職の取消しは、就労免除という従業員の地位を失わせる措置であり、その後の欠勤や退職扱いにも直結します。

就業規則に取消しの根拠規定があるか、調査で把握した事実がその要件を満たすかを確認しないまま行うと、取消し自体が無効と判断されかねません。

解雇を検討している場合

解雇を検討する段階では、「一時的な手伝い」と「継続的な二重就職」のどちらに位置づけられるかが最大の争点となります。

調査で集めた事実がどちらの評価に傾くのか、証拠として足りているのかを、通知を出す前に確認しておく必要があります。

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稲田経営法律事務所では、問題社員への対応を含む労務のご相談を承っております。

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監修弁護士の紹介

稲田拓真(岡山弁護士会)

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。

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