介護事業者で顧問弁護士を活用する場面|岡山の介護事業者向け

介護施設で利用者に寄り添う介護士

岡山県では高齢化が進み、介護サービスを安定して提供するための人材確保・育成が重要な課題となっています。介護事業の経営では、職員の採用や定着、労働時間の管理、利用者や家族からの過剰な要求、介護事故、事業承継など、日々さまざまな問題が発生します。

今回は、弁護士を介護事業の法務部として活用するためのポイントを解説します。

介護職員に関する労務問題への対応

介護事業では、一人の職員の欠勤や退職が他の職員の勤務や利用者へのサービスに直結します。そのため、問題が生じた職員への対応だけでなく、残業代や労働時間など、事業所全体の労務管理を整えることが欠かせません。

休みがちな職員や突然休職する職員への対応

「シフトが決まった後に欠勤を繰り返す」「他の職員とのトラブルをきっかけに出勤しなくなった」といった相談があります。

介護事業では限られた人員でシフトを組んでいるため、一人が欠勤すると、他の職員が休日出勤や残業をしなければならないこともあります。

このような従業員の問題にどう対応するか、顧問弁護士が貴社の法務部として、一緒に検討して対応いたします。

職員間のハラスメントや人間関係による離職

介護現場では、管理者、介護職、看護職、ケアマネジャーなど、異なる職種の職員が連携して働きます。

特定の職員による強い叱責、無視、他の職員への攻撃的な言動などを放置すると、本人だけでなく周囲の職員まで退職する原因になりかねません。

当事務所では、就業規則やハラスメント防止規程を整えるほか、問題となる言動をする職員への注意・指導方法についても助言し、問題発生後の対応だけでなく、離職を防ぐための法務機能を果たします。

ケアマネの残業代や管理者など労働時間管理の問題

介護事業の労働問題で多いのは残業代に関するトラブルです。

ケアマネージャー・サービス管理責任者を、管理監督者と位置付けているが、退職後に残業代請求をされ、1000万円を超える支払いを命じられるケースもあります。

あるいは、泊まり勤務を行っている職員の仮眠時間が労働時間であるとされ、多額の残業代の支払いを要したケースもあります。

顧問弁護士には、残業代を請求されてからだけではなく、現在の勤務体系や管理者の取扱いに問題がないかという段階から相談できます。

利用者や家族とのトラブルを防ぐ利用規約・重要事項説明書を整える

介護事業では、利用者や家族からの要望や苦情に丁寧に対応することが必要です。一方で、暴言・暴力、性的な言動、長時間の電話や過剰な要求によって、職員が疲弊することもあります。

厚生労働省も、すべての介護サービス事業者について職場におけるハラスメント対策を求めるとともに、利用者や家族等からのカスタマーハラスメントについて、防止方針を明確にするなどの取組みを推奨しています。

問題が起きてから「どこまで対応するか」を考えるだけでなく、サービスの利用を開始する段階から、事業所としてのルールを利用者や家族に伝えておくことが重要です。

利用規約・重要事項説明書で「できること・できないこと」を明確にする

介護サービスでは、契約書や重要事項説明書などを用いて、提供するサービスの内容や利用条件を説明します。有料老人ホームについても、厚生労働省は重要事項説明書を実態に即して正確に作成し、契約前に十分説明することを求めています。岡山県も有料老人ホーム向けの重要事項説明書の様式を公開しています。

この場合には、デイサービス、訪問介護、グループホームなど、サービスの内容や現場で実際に起きている問題を確認したうえで、その事業所で運用できる内容にする必要があります。

顧問弁護士は、契約書を作るだけでなく、現場でどのような要求に困っているのかを聞き取り、それを利用規約や重要事項説明の内容に反映する法務機能を担うことができます。

暴言・暴力やセクシュアルハラスメントがあった場合

利用者や家族から、職員に対する大声での叱責、人格を否定する発言、物を投げる・叩くといった行為や、性的な発言・身体への接触が問題になることがあります。

利用者の認知症その他の状態を踏まえて対応する必要がある場合もありますが、「介護職だから仕方がない」と職員個人に我慢を求め続けることは適切ではありません。

いつ、誰が、どのような言動を受けたのかを記録し、担当者の変更、家族への説明、複数人での対応などを検討します。

また、利用規約や重要事項説明の段階で対応方針を示しておけば、問題が発生した際にも、事前に説明したルールに沿って組織的に対応しやすくなります。

訪問介護では一人で利用者宅に入ることを前提にルールを作る

訪問介護では、施設内と異なり、職員が一人で利用者宅に入りサービスを提供することが多くあります。

暴言・暴力や性的な言動があっても、その場で他の職員が助けに入ることが難しいため、事前のルールづくりが特に重要です。

例えば、一定の場合には複数人で訪問すること、職員の安全が確保できない場合には管理者が対応することなどをあらかじめ整理しておきます。

それでも状況が改善しない場合には、今後のサービス提供をどうするかという難しい判断も生じます

そのため、サービスを終了する直前ではなく、「この利用者への訪問を職員一人で続けてよいのか」と感じた段階で顧問弁護士に相談することが重要です。

介護事故や不適切なケアなどの問題が起きたとき

介護事業では、十分に注意をしていても、転倒、誤嚥、誤薬などの事故が発生することがあります。事業を止めないためにどのような対応ができるか、顧問弁護士が貴社の法務部としてサポートします。

介護事故について家族から責任を求められた

利用者が転倒して骨折した場合などに、「施設の管理が悪かったのではないか」「治療費や慰謝料を支払ってほしい」と求められることがあります。

このようなケースで発生原因、利用者の状態、事故前の態様等を踏まえた対応策を立てる必要があります。顧問弁護士は、貴社の法務部として、利用者からの申し入れに対応します。

不適切なケアや虐待が疑われる場合

「職員が利用者に強い口調で接している」「身体拘束ではないか」「家族から虐待だと指摘された」という場合には、速やかな事実確認が必要です。

一方で、問題を起こしたとされる職員についても、本人から事情を聞かずに懲戒処分等を行えば、別の労務問題になる可能性があります。

利用者を守ることと、適正な職員対応の双方を意識して調査・対応を進める必要があります。

日頃から記録と対応ルールを整える

介護事故や不適切なケアの問題では、後から「そのとき何をしていたのか」を確認するため、日々の記録が重要になります。

顧問弁護士には、事故発生後の対応だけでなく、事故報告、職員への指導記録、社内規程など、普段の記録やルールが適切かを確認する法務担当としての役割も期待できます。

補足:日本版DBSに対応できていますか

こども性暴力防止法という法律が2026年12月24日より施行されます。

この法律では、学校設置者等をはじめとする事業者に対し、性暴力の防止のための措置を義務付けるとともに、性暴力に関する前科の確認権限や性暴力への対応をとっていることを示すマークを付与するものです。

介護福祉事業の中でも、放課後等ディサービス、居宅訪問型児童発達支援等の事業はDBS対策が必須となります。また、小規模住居型児童養育事業、居宅介護、同行援護、行動援護、短期入所又は重度障害者等包括支援の事業は、任意ですが、認定の対象となります。

顧問弁護士は、貴社の一人法務部として、これらの措置に向けた必須の対策を実現し、また、認定対象の事業者の認定に向けた規則の整備、従業員対応等を行います。これにより、性暴力を防止するとともに、貴社の社会的信頼を高めることに繋げます。

介護事業を次の世代へ引き継ぐとき

介護事業でも、経営者の高齢化や後継者不足は避けて通れません。

中小の介護事業者では、「採用は全部社長が行う」「利用者家族との難しい話は社長が対応する」「管理者が辞めたら代わりがいない」ということもあります。

この状態では、会社の株式を後継者に渡すだけで事業承継を完了することはできません。

誰が管理者を担うのか、職員をどのように定着させるのか、利用者や取引先、金融機関との関係をどう引き継ぐのかを早めに整理する必要があります。

後継者となる子どもがいない場合には、役員・従業員への承継や第三者へのM&Aも選択肢になります。

また、事業承継には、株式や相続だけでなく、税務、不動産、労務、資金調達など複数の問題が関係します。

当事務所では、事業承継に関する研究会に定期的に参加するとともに、税理士、司法書士、社会保険労務士など他士業とのネットワークづくりにも取り組んでいます。

「誰に継がせるかもまだ決めていない」という段階から、必要な専門家と連携しながら検討を進めることができます。

まとめ|介護事業者の顧問弁護士は職員と事業を守るために活用する

職員の労務問題、利用者や家族からの過剰な要求、介護事故、事業承継。一見すると別々の問題ですが、介護事業では、いずれも安定したサービスを継続できるかという経営課題につながっています。

「この職員への対応をこのまま続けてよいだろうか」

「利用者の家族からの要求で職員が疲弊している」

「事故についてどのように家族へ説明すればよいだろうか」

「そろそろ自分の後の経営者について考えた方がよいだろうか」

こうした経営者が少し気になった段階で相談できることが、顧問弁護士を置くメリットです。

当事務所では、岡山県内の介護事業者を含む中小企業の経営者から、従業員対応、利用者・家族とのトラブル、事業承継などのご相談をお受けしています。

問題が深刻になる前の段階でも、お気軽にご相談ください。

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監修弁護士

稲田拓真(岡山弁護士会)

岡山市に拠点を持つ「困った従業員・問題社員への対応」などの労働問題に強い弁護士。東京で4年以上、労働問題に対応し続けた経験を持つ。この経験や最新判例、人間心理の知識を生かし、迅速に解決策の提案と実行をサポート。「早々にご回答ありがとうございます」等の言葉をいただきながら、日々岡山の社長のために奔走している。