
岡山県内では、住宅、店舗、工場、土木、設備など、多くの建設工事が行われています。
建設会社の中でも、元請や一次下請として複数の協力会社を使いながら工事を進める会社では、自社の施工だけではなく、従業員、下請会社、工事全体の工程、契約条件、工事代金まで管理する立場になります。
そのため、
「欠勤が多く現場を任せられない従業員がいる」
「下請会社に工事を追加で頼んだが、金額を決めていなかった」
「元請から工事代金を払ってもらえない」
「施工不良を繰り返す下請会社との取引を終わらせたい」
といった問題が日常的に生じます。
顧問弁護士は、裁判になった後だけでなく、元請・一次下請として現場と取引全体を管理する建設会社の法務部として活用できます。
1.従業員だけでなく、現場全体の労務・安全管理を行うとき
欠勤を繰り返す従業員への対応
建設会社では、一人の現場監督や職人が欠勤するだけでも、予定していた工程や協力会社の配置に影響する場合があります。
特に現場管理を任せている社員が突然休むことを繰り返せば、下請会社への指示や発注者への対応にも支障が出ます。
一方で、「現場に迷惑をかけた」という理由だけで直ちに解雇できるわけではありません。
欠勤理由、これまでの勤務状況、注意・指導内容、就業規則などを確認し、必要な指導を積み重ねていく必要があります。
顧問弁護士には、退職を求める段階ではなく、注意書の作成や面談記録の残し方から相談できます。
能力不足の現場監督・従業員への対応
建設会社では、単に作業ができるだけではなく、工程管理、下請への指示、発注者との調整、安全管理など、立場に応じた能力が求められます。
例えば、
「同じ施工ミスを繰り返す」
「下請への指示ができず工程が遅れる」
「何度教えても現場を一人で任せられない」
といった場合です。
能力不足への対応では、「仕事ができない」という抽象的な評価ではなく、何を求め、何ができていないのかを具体化し、指導と改善状況を記録することが重要です。
元請・特定元方事業者として現場の安全を管理する
建設会社の安全管理は、自社の従業員だけを見ていればよいわけではありません。
建設業では、同じ現場で元請、一次下請、二次下請、一人親方など複数の事業者が作業することがあります。
建設業の元方事業者には、関係請負人が危険防止措置を適切に講じるための指導等が求められます。さらに特定元方事業者には、混在作業による労働災害を防止するため、協議組織の設置、作業間の連絡・調整、現場巡視、安全衛生教育への指導・援助などの義務があります。
一定規模以上の現場では、統括安全衛生責任者や元方安全衛生管理者の選任も必要になります。
そのため、重大事故が起きた後だけではなく、
「現場の安全管理体制はこれでよいか」
「下請会社が安全上の指示に従わない場合どうするか」
という段階から確認する必要があります。
元請に近い立場になるほど、自社社員の労務管理と、現場全体の安全管理の双方が経営課題になります。
2.元請・下請との契約書を作成し、取引条件を管理するとき
建設業では、契約金額が大きく、工事期間中に追加・変更が発生することも少なくありません。
ところが、実際の現場では、
「まず現場に入ってもらった」
「追加部分は後で金額を決めることにした」
「完成の基準を明確にしないまま施工を続けてもらった」
ということがあります。
このような運用が後の大きな紛争につながります。
工事を始める前に、工事内容と完成の基準を明確にする
建設業法では、建設工事の請負契約について、工事内容、請負代金、工期その他の事項を書面等で明確にすることが求められています。
これは単なる形式的な義務ではありません。
例えば、
「どこまで施工すれば完成なのか」
「誰が検査するのか」
「手直しが必要な場合はどうするのか」
「いつ工事代金が発生するのか」
が曖昧であれば、工事終了時に大きな争いになります。
特に元請や上位の下請会社では、多数の協力会社と取引するため、契約書を整えること自体が工事原価や利益を管理する仕組みになります。
追加・変更工事を口頭だけで進めない
建設工事では、着工後に追加工事や仕様変更が生じることがあります。
建設業法令遵守ガイドラインでも、追加・変更工事については変更内容を明確にして書面による契約を行うことが前提とされています。工期変更についても変更契約が必要と整理されています。
しかし実際には、
「現場で担当者から頼まれたから追加で施工した」
「金額は後で話すことにした」
という状態で工事が進むことがあります。
工事が順調な間は問題になりませんが、関係が悪化すると、
「それは元の工事に含まれていた」
「そんな追加工事は頼んでいない」
という争いになります。
そのため、追加工事が出たときに、誰が承認し、どの段階で見積書・注文書・変更契約を交わすのかを会社のルールとして決めておくことが重要です。
監修弁護士のコメント
当職が扱った建設工事の案件でも、建設業法上書面を作成すべき場面でありながら、追加工事について十分な契約書を作らず、どの段階で工事が完成するのかについても曖昧なまま施工を続けさせていたケースがありました。
その後、「工事は完成したのか」「追加工事代金はいくらなのか」が争いとなり、結果として3,000万円近い工事代金の支払が問題となりました。
数千万円の工事では、契約書を作成する手間は工事金額から見ればわずかです。
にもかかわらず、現場を急ぐあまり契約を後回しにすると、一つの判断が数千万円単位の損失につながる可能性があります。
建設会社にとって顧問弁護士を置くメリットの一つは、「工事を始める前」「追加工事を依頼する前」に短時間で契約条件を確認できることにあります。
3.工事代金を回収するとき
元請・一次下請など上流の会社では、自社が発注者から代金を回収できなければ、下請会社への支払や従業員の給与にも影響します。
そのため、工事代金回収は単なる債権回収ではなく、会社の資金繰りそのものです。
「まだ完成していない」と言われた場合
工事代金の紛争で問題になりやすいのが、工事の完成です。
発注者が、
「手直しが残っているから完成していない」
「完成していないので代金は払わない」
と主張することがあります。
このとき、契約書で工事内容や完成の基準が明確になっていれば判断しやすくなります。
反対に、契約内容そのものが曖昧であれば、どこまで施工すれば完成なのかという入口から争わなければなりません。
工事代金回収は、請求するときではなく、契約するときから始まっています。
追加工事代金を回収する
追加工事でも同じです。
見積書や変更契約があれば請求内容を説明しやすい一方、口頭だけで施工した場合には、発注の有無や代金額をメール、LINE、工事写真、工程表などから立証することになります。
顧問弁護士を入れる目的は、未払いが起きたときの回収だけではありません。
日頃から書面作成のルールを整え、数千万円単位の売掛金が「言った・言わない」の問題にならない状態を作ることにあります。
支払が遅れた段階で相談する
建設業では一件の未収金が大きいため、回収不能になると会社の資金繰りへの影響も大きくなります。
「今月だけ待ってほしい」
「次の工事代金が入ったら払う」
と言われたときこそ、支払期限、分割方法、書面化などを検討する必要があります。
相手の資金状況がさらに悪化してからでは、法的に請求できても実際には回収できない場合があります。
4.問題のある下請会社との契約・取引を解消するとき
元請や一次下請の建設会社では、下請会社を選び、継続的に工事を任せる立場になります。
その一方で、一度取引を始めた協力会社について、
「施工不良が多い」
「安全上の指示に従わない」
「代表者が刑事事件に巻き込まれた」
などの問題が発生することがあります。
施工不良を繰り返す下請会社との取引を終了する
施工不良が続く場合、元請会社自身が発注者に対して責任を負う可能性があります。
そのため、
「もう次の現場には入れたくない」
「現在の工事も解除したい」
と考えることがあります。
ただし、現在進行中の請負契約を解除することと、将来新たな工事を発注しないことは分けて考える必要があります。
施工不良の内容、是正要求、契約書の解除条項、残工事、出来高などを整理したうえで出口を決めます。
特に元請会社では、契約を解除した後に残りの工程を誰に施工させ、発注者との工期をどう守るのかまで考えなければなりません。
下請会社の代表者等が刑事事件に巻き込まれた場合
実際の取引では、協力会社の代表者や従業員が刑事事件に巻き込まれることもあります。
しかし、「逮捕された」という事実だけから直ちに契約解除できるとは限りません。
事件の内容、工事への影響、契約上の解除事由、発注者や他の協力会社への影響などを確認します。
特に元請会社では、その下請会社を現場から外した結果、工程が止まれば、自社が発注者に対して責任を問われる可能性があります。
したがって、契約を切れるかだけではなく、切った後に工事をどう完成させるかまで含めて判断する必要があります。
協力会社との基本契約書に「出口」を定めておく
継続的に下請会社へ発注する会社では、個別の注文書だけでなく、基本契約書を整えておくことが有効です。
施工不良、安全上の指示違反、重大な信用不安、反社会的勢力との関係など、どのような場合に契約を解除できるのかをあらかじめ明確にします。
問題が起きてから解除理由を探すのではなく、取引を始める段階で、問題が起きた場合の出口まで決めておくことが重要です。
まとめ|元請・一次下請の建設会社ほど「外部法務部」が機能する
建設業の顧問弁護士活用を考えるとき、対象として特に相性がよいのは、単独で作業する一人親方というよりも、従業員を雇用し、複数の下請会社を使い、発注者との契約と現場全体を管理する元請・一次下請などの建設会社です。
こうした会社では、
「従業員にどう指導するか」
「現場全体の安全管理をどうするか」
「追加工事をどう契約するか」
「工事代金をどう確保するか」
「問題のある協力会社をどう切り替えるか」
という判断が日常的に発生します。
建設業では一つの契約が数千万円になることもあり、契約書を一枚作らなかったことが、後に数千万円の争いになることがあります。
紛争になった後だけでなく、工事を受注するとき、追加工事を発注するとき、下請会社に問題を感じ始めたときから相談できることが、建設会社が顧問弁護士を置く大きなメリットです。